-精神科コラム- 2026年2月

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電車でパニック発作を起こる人の「正体」-2026年2月3日-

満員電車の中で、突然、息が苦しくなり、動悸が激しくなり、「このまま倒れてしまうのではないか」「ここから逃げられない」と強い恐怖に襲われる――。
このような経験をしたことがある方は、決して少なくありません。いわゆる「電車でのパニック発作」です。

周囲から見ると、「急に体調が悪くなった人」「緊張しやすい人」「弱い人」と誤解されがちですが、実際の正体はまったく違います。

パニック発作は “脳の誤作動”

パニック発作の本質は、「脳の防災システムの誤作動」です。

人間の脳には、命を守るための“非常警報装置”があります。
本当に危険な状況になると、心拍数を上げ、呼吸を速くし、体を戦闘モードに切り替えます。

ところが、強いストレスや疲労、不安が続くと、この装置が過敏になります。
すると、実際には危険ではない電車内でも、

「ここは危ない!」
「逃げろ!」

と、誤って警報を鳴らしてしまうのです。

これがパニック発作の正体です。

なりやすい人の特徴

電車で発作を起こしやすい人には、ある共通点があります。

まず多いのが、「責任感が強い人」「我慢強い人」です。
仕事や家庭で無理を重ね、「弱音を吐かない」「頑張り続ける」タイプの方ほど、発症しやすい傾向があります。

また、

  • 完璧主義
  • 人に迷惑をかけたくない
  • 評価を気にしやすい
  • 不安を抱え込みやすい

こうした性格傾向も関係します。

つまり、パニック発作を起こす人は、むしろ「真面目で頑張り屋な人」が多いのです。

なぜ電車で起こりやすいのか

「家では平気なのに、なぜ電車だけ?」と疑問に思う方も多いでしょう。

理由は3つあります。

① 逃げられない環境
電車は途中で降りられず、「閉じ込められている感覚」が強くなります。

② 人目が多い
「倒れたらどうしよう」「恥ずかしい」という不安が増幅します。

③ 身体感覚が強調される
揺れや暑さ、息苦しさが、発作の引き金になります。

これらが重なることで、脳の警報装置が作動しやすくなるのです。

「また起きたらどうしよう」が悪循環を生む

一度発作を経験すると、多くの人がこう考えます。

「また電車で起きたらどうしよう」

この“予期不安”こそが、最大の敵です。

不安になる

体が緊張する

動悸・息苦しさが出る

「やっぱり危ない!」と思う

発作が強まる

この悪循環が、発作を繰り返す原因になります。

発作は「命に関わらない」

ここで大切な事実があります。

パニック発作で命を落とすことは、医学的にほぼありません。

どんなに苦しくても、

・心臓は止まりません
・窒息しません
・気が狂うこともありません

「つらいけれど、安全な症状」なのです。

この理解だけでも、発作の頻度は大きく下がります。

回復への第一歩は「自分を責めない」

パニック障害の回復で最も重要なのは、「自分を責めないこと」です。

「自分は弱い」
「情けない」
「普通になれない」

こうした考えは、症状を悪化させるだけです。

発作は、心と体が「もう限界だよ」と出しているサインです。
決して失敗ではありません。

治療すれば良くなる病気です

パニック障害は、適切な治療で十分に改善します。

  • 薬物療法
  • 認知行動療法
  • 生活習慣の見直し
  • ストレス調整

これらを組み合わせることで、多くの方が電車に普通に乗れるようになります。

「一生治らない病気」ではありません。

最後に

電車でパニック発作を起こす人の正体は、

「弱い人」ではなく、
「頑張りすぎてきた人」です。

これまで誰よりも努力してきた証でもあります。

もし今、苦しんでいるなら、ひとりで抱え込まず、専門家に相談してください。
回復への道は、必ずあります。

あなたの人生は、発作で終わるものではありません。
これから、もう一度、安心して前に進むことができるのです。

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