-精神科コラム- 2025年11月

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寒くなってきた時期のメンタルヘルス -2025年11月11日-

寒さが増してくる季節は、身体だけでなく心にも大きな影響を及ぼします。日照時間の短縮や気温の低下により、人の生体リズムやホルモン分泌が変化し、気分の落ち込みや意欲低下を感じやすくなります。以下では、寒くなってきた時期に特に意識したいメンタルヘルス対策を、医学的根拠と実践的工夫の両面から解説します。

① 光と生活リズムを整える

冬季に多く見られる気分の落ち込みには「季節性うつ病(冬季うつ)」が関係していることがあります。これは日照時間の減少により、脳内のセロトニンやメラトニンのバランスが崩れるためと考えられています。
できるだけ朝の光を浴びることが重要です。起床後1時間以内にカーテンを開け、外の光を5〜10分でも浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整います。もし日照が少ない地域や時間帯が多い場合は、「高照度光療法用ライト」やデスクライトの活用も有効です。

② 適度な運動で血流を維持する

寒い時期は身体がこわばり、外出機会も減りがちです。しかし、軽い運動はうつ予防の有効な手段とされています。ウォーキング、ストレッチ、ヨガなど、15〜30分程度体を動かすだけでも、脳内でセロトニンやエンドルフィンが分泌され、気分が明るくなります。
「気分が落ちている時こそ、あえて体を動かす」ことがポイントです。屋内でも手軽にできる運動(ラジオ体操、室内ウォーキング、スクワットなど)を日課にするとよいでしょう。

③ 栄養と睡眠を整える

冬場はエネルギー消費が増え、栄養バランスが乱れやすくなります。ビタミンD(日光により合成され、セロトニン生成にも関与)や鉄分・タンパク質(神経伝達物質の材料)が不足しないように意識しましょう。魚・卵・豆類・野菜を組み合わせた温かい食事がおすすめです。
また、寒い夜は寝つきが悪くなることもあります。寝室の温度を18〜20℃前後に保ち、就寝前のスマートフォン使用を控え、一定の時刻に寝起きすることで、睡眠の質を維持できます。

④ 人とのつながりを保つ

冬季は人と会う機会が減り、孤立感が強まることがあります。特にリモートワークや独居の方は、意識的に「人と話す時間」を確保しましょう。オンラインでも構いません。
また、感謝や近況を共有することが、ポジティブな感情を高めることが知られています。挨拶やちょっとしたメッセージのやりとりが、心の温度を保つ小さな習慣になります。

⑤ 無理をせず、早めの相談を

冬場の落ち込みは「季節のせい」として見過ごされがちですが、2週間以上気分の低下や睡眠・食欲の変化が続く場合は、医療機関やカウンセラーへの相談を検討してください。早期に支援を受けることで回復が早まります。

まとめ

寒さが増す季節には、身体的な冷えだけでなく、心理的な“心の冷え”にも注意が必要です。
朝の光、適度な運動、栄養と睡眠の管理、人とのつながりを意識することで、冬のメンタルダウンを予防できます。気分の変化を自分のせいとせず、「季節に合わせたセルフケア」を心がけることが、心身の健康を守る第一歩です。

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