気持ちが落ち込む日が続いたり、不安が強くて動けなくなったり、「どうして自分だけ…」と感じてしまうことはありませんか。現代はストレスに満ちていて、多くの方が心の不調と向き合っています。そんなとき、薬やカウンセリングと並んで、役に立つことが実は「運動」です。
「運動なんて気力がない」「体力がないから無理」と思われるかもしれません。でも、運動は競技スポーツのように頑張る必要はありません。むしろ、“少し体を動かすこと”が、心の回復に大きく関わっていることが、医学的にも分かってきています。
運動をすると、脳の中で「幸せホルモン」と呼ばれる物質が増えます。たとえば、気分を整えるセロトニンや、意欲や喜びを感じるドーパミンです。これらが増えることで、落ち込みや不安が少し和らぎ、「やってみよう」という気持ちにつながりやすくなります。また、脳の働きを助ける栄養因子(BDNF)が増え、思考力や集中力が少しずつ戻ってくるといわれています。
さらに、運動はストレスホルモン「コルチゾール」を抑えてくれる働きもあります。ストレスが続くと心も体もしんどくなりますが、運動するとリラックスしやすくなり、夜の眠りも深くなりやすいのです。「よく眠れた」という実感は、それだけで心の負担をグッと減らしてくれます。
では、どんな運動が良いのでしょう?
実は、特別なことをする必要はありません。
・散歩
・軽いストレッチ
・ラジオ体操
・ゆるいヨガ
これだけでも十分です。
1日10分でも、外の空気を吸って歩くだけでも、心は少し軽くなります。
それでも動き出すのが大変なときは、無理をしなくて大丈夫です。たとえば、
「今日は服を着替えられた」
「玄関まで行けた」
「少し歩けた」
その一つひとつが、とても大切な回復のステップです。できなかった日があっても気にしなくて構いません。“少しずつ”が何よりの鍵です。
また、外に出て日光を浴びると、体内時計が整い、気分も改善しやすくなります。人とのちょっとした挨拶や会話が生まれるだけでも、「社会とつながっている」という安心感につながります。
もちろん、気持ちがとてもつらい時期には、運動どころではないこともあります。その場合は、治療を優先し、無理をしないことが大切です。主治医と相談しながら、できるタイミングが来たら、少しずつ取り入れてみてください。
心と体はひとつ。
体が少し動き始めると、心も少しずつ前を向きます。
あなたのペースで、できるときに、できるだけ。
その小さな一歩が、確かにあなたを助けてくれます。
焦らず、一緒に進んでいきましょう。