-精神科コラム- 2025年10月

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災害に備えるこころとからだの準備 -2025年10月13日-

―医師の立場から伝えたい「いざ」という時の健康管理―

日本は地震、台風、豪雨など、いつどこで災害が起きてもおかしくない国です。
非常食や懐中電灯を備える方は多いと思いますが、実は「からだ」と「こころ」の準備こそが、命を守るために欠かせない備えです。今回は医師の立場から、健康面での防災ポイントをお伝えします。

① 持病のある方へ:薬と記録を命綱に

慢性疾患(高血圧、糖尿病、心臓病、精神疾患など)のある方は、いつも飲んでいる薬を 1〜2 週間分、非常袋に入れておきましょう。
また、お薬手帳や診察券、診断名・服薬内容のメモを持っておくと、避難先でもスムーズに医療を受けられます。
スマートフォンの写真やメモアプリに記録しておくのもおすすめです。

災害時は医療機関が一時的に閉鎖されることもあります。
かかりつけ医と「もしもの時の相談ルート」を決めておくと安心です。

② 避難生活で注意したい体調変化

避難所では、慣れない環境や睡眠不足、ストレスによって体調を崩しやすくなります。
冷えやすい夜には体温を保つ工夫をし、脱水にならないよう水分をこまめにとりましょう。
また、高齢の方や小さなお子さんは”感染症や誤嚥性肺炎、血栓症(エコノミークラス症候群)”にも注意が必要です。

椅子や床に長時間座りっぱなしにならず、定期的に足を動かす・軽い体操をすることが大切です。

③ こころのケアも忘れずに

災害後、「眠れない」「何度も思い出す」「涙が出る」「人と話したくない」といった反応は、誰にでも起こりうる自然なストレス反応です。
無理に頑張ろうとせず、まずは「怖かった」「不安だ」という気持ちを言葉にしてみてください。
周りの人と話すことが、心の回復の第一歩になります。

眠れない夜が続いたり、気分の落ち込みが長引く場合は、早めに医療機関に相談を。
心のケアも立派な防災の一部です。

④ 感染症を防ぐちょっとした工夫

避難所では、人との距離が近く、ウイルスが広がりやすい環境です。
マスク、ハンカチ、アルコール消毒液を備えておくことはもちろん、
”「咳が出る人は離れて休む」「手洗い・うがいを欠かさない」”という基本を守ることが、互いの健康を守ります。
普段からワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌など)を接種しておくことも大切です。

⑤ 心と体を守る「日常の備え」

防災は「特別な時の準備」ではなく、日常生活の延長線上にあります。
食料や水だけでなく、

  • 常用薬のストック

  • 医療情報の記録

  • 睡眠・食事・休息のリズム

  • 周囲とのつながり

これらを整えておくことが、災害時の心身の強さにつながります。
「からだを守る備え」と「こころを守る備え」を両輪にしておきましょう。

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