-精神科コラム- 2026年1月

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女性のこころと睡眠 -2026年1月18日-

女性のこころと睡眠は、ホルモンの波と生活の役割変化の影響を受けやすく、同じ「不眠」でも背景が少しずつ異なります。眠れない夜が続くと、気分の落ち込みや焦りが強くなり、「眠れないこと」そのものがストレスになってさらに眠れない——という悪循環が起こります。ここでは、女性に多いライフステージごとの特徴と、今日からできる整え方をまとめます。

1)睡眠は“気合い”ではなく“生理”で決まる

睡眠は脳と身体のリズム(体内時計)と、起きていた時間に応じて高まる眠気(睡眠圧)で決まります。気分が落ちていると「早く寝なきゃ」と努力しがちですが、寝床で頑張るほど目が冴えるのは自然な反応です。まずは「眠れないのは意思の弱さではない」と捉え直すことが、回復の第一歩になります。

2)女性特有の“ホルモン変動”と睡眠

女性では、月経周期・妊娠/産後・更年期という大きな節目で、睡眠の質が揺れやすくなります。

月経周期:PMS/PMDDと不眠

排卵後〜月経前は、いら立ち・不安・落ち込みが強くなったり、寝つきが悪く浅眠になったりしやすい時期です。PMDD(重い月経前症候群)では、気分症状が生活に支障をきたします。「毎月この時期だけ明らかに悪化する」場合、気分の波と睡眠の波をセットで記録すると、対策が立てやすくなります。

妊娠・産後:睡眠不足とメンタルの“相互増幅”

妊娠中は頻尿、むずむず脚、胃酸逆流、体位の制限などで眠りが分断されがちです。産後は授乳・育児で睡眠が細切れになり、回復する前に次のタスクが来る状態が続きます。睡眠不足は抑うつ・不安を悪化させ、抑うつ・不安はまた眠りを浅くするため、周囲の支援(夜間の交代、家事の外注、短時間でも“連続して眠れる塊”を確保)が治療的に重要です。

更年期:ほてり・発汗と中途覚醒

更年期ではホットフラッシュ(ほてり・寝汗)で夜間に目が覚めやすくなります。さらに、気分の揺れや不安が重なると、寝床が「考えごとの場所」になりがちです。この時期は、身体症状のケア(温度・寝具・飲酒の見直し)と、眠りへのこだわりをほどく心理的アプローチの両輪が効きやすい印象です。

3)女性に多い“見落とされやすい睡眠の敵”

  • むずむず脚症候群(RLS):夕方〜夜に脚がむずむずして動かしたくなる。鉄不足で悪化しやすく、月経や妊娠で顕在化することがあります。

  • 睡眠時無呼吸:女性は「いびきが少ない」「日中の眠気が目立たない」など典型像から外れることがあり、疲労感・頭痛・気分不調として現れる場合があります。

  • 甲状腺機能の変動:動悸、不安、寝つきの悪さの背景になることがあるため、症状の組み合わせで検査が勧められることがあります。

「眠れない=心の問題」と決めつけず、身体要因を点検する視点も大切です。

4)今日からできる“睡眠を取り戻す”コツ(女性の生活に合わせて)

(1)睡眠の土台:起床時刻を固定する

寝つきよりも、まず起きる時刻を毎日そろえるのが最優先です。体内時計が整うと、夜の眠気が作られやすくなります。休日の寝だめは“最大でも+1時間”を目安に。

(2)「寝床=眠る場所」を守る(刺激統制)

眠れないまま30分以上寝床で粘るほど、脳は寝床を“覚醒の場所”として学習します。眠れないときは一度起き、薄暗い場所で静かな作業(紙の本、呼吸法、軽いストレッチ)に切り替え、眠気が戻ってから寝床へ。

(3)カフェイン・アルコールの“タイミング”を調整

コーヒーや緑茶は午後遅くほど影響が残りやすいです。アルコールは寝つきを良くしても後半の眠りを浅くし、中途覚醒や早朝覚醒の原因になります。「量」より「時間(就寝前)」が鍵です。

(4)月経前・更年期は“温度戦略”

寝室を少し涼しめにし、吸湿性の高い寝具や着替えやすい服装に。更年期の寝汗には、重ね着で調整できる工夫が有効です。

(5)“考えごと”を寝床から追い出す:心配ノート

就寝1〜2時間前に、心配事を紙に書き出し、対応策があるものは「明日やること」に分けます。脳が「今夜は考えなくていい」と理解しやすくなります。

5)治療の選択肢:心理療法と薬は“相手”を見て使う

不眠の第一選択として、**不眠の認知行動療法(CBT-I)**は効果が高く、再発予防にも役立ちます。月経前の気分症状が強い場合は、SSRIが有効なことがあります。更年期の症状が中心なら、身体症状への治療(場合によりホルモン療法を含む)や、不安・抑うつの併存評価が重要です。睡眠薬については、「必要な時期に、必要最小限で、目的を明確に」使うのが基本です。妊娠・授乳期は薬剤選択が特に繊細なので、自己判断せず主治医と一緒にリスクとベネフィットを検討してください。

6)受診の目安(セルフケアで粘りすぎない)

  • 眠れない状態が週3回以上3か月以上続く

  • 日中の集中力低下、抑うつ、不安、希死念慮が強い

  • いびき、無呼吸、脚のむずむず、強い寝汗など身体症状が目立つ

  • 産後で「休めない」「涙が止まらない」「怖さが強い」

睡眠は「心の健康の土台」です。眠りが崩れたときは、あなたの努力が足りないのではなく、身体と環境が“いまのあなた”に合っていないサインかもしれません。生活の工夫と適切な治療を組み合わせ、眠りを取り戻す道筋を一緒に作っていきましょう。

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