不安型うつ病において「不安感」に焦点を当てた場合、抑うつ改善と同時に抗不安作用が期待できる薬剤を選択することが重要です。以下に、臨床で実際に用いられる代表的薬剤を具体的に挙げます。
【第一選択:SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)】
不安症状を伴ううつ病では、SSRIが基本となります。
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エスシタロプラム(レクサプロ)
不安障害に対するエビデンスも豊富で、忍容性が比較的良好。初期不安増悪を避けるため少量開始が望ましい。 -
セルトラリン(ジェイゾロフト)
不安・抑うつ双方に有効。身体症状を伴う不安にも使いやすい。 -
パロキセチン(パキシル)
抗不安作用は強いが、離脱症状や賦活化に注意。
【SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)】
不安と意欲低下が併存する場合に有効。
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ベンラファキシン(イフェクサーSR)
不安障害への適応もあり、重症例に用いられることが多い。 -
デュロキセチン(サインバルタ)
身体症状(疼痛)を伴う不安抑うつに適する。
※ノルアドレナリン作用により、焦燥が強い初期には慎重投与が必要。
【NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)】
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ミルタザピン(リフレックス/レメロン)
鎮静作用があり、不眠や焦燥が目立つ症例に有効。不安軽減効果も期待できる。
【セロトニン調節薬】
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ボルチオキセチン(トリンテリックス)
認知機能改善作用が注目され、不安症状にも一定の効果が示唆されている。
【抗不安薬(補助的使用)】
● ベンゾジアゼピン系(短期使用)
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ロラゼパム(ワイパックス)
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アルプラゾラム(ソラナックス)
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エチゾラム(デパス)
急性期の強い不安・パニックに有効。ただし依存・耐性の問題があり、原則短期併用。
● 非ベンゾ系抗不安薬
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タンドスピロン(セディール)
5-HT1A部分作動薬。依存性が少なく、慢性的な不安に使用。
【増強療法として】
抗うつ薬単剤で不安が残存する場合:
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アリピプラゾール(エビリファイ)
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クエチアピン(セロクエル)
少量併用で焦燥や不安の改善を図ることがあります。
【臨床的ポイント】
不安型うつ病では、
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初期は低用量開始・緩徐増量
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不眠や焦燥が強い場合は鎮静性薬剤を選択
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ベンゾジアゼピンは短期間に限定
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心理療法併用が重要
という戦略が推奨されます。
不安が強い症例では、単純に抗うつ薬を増量するだけでは不十分なことも多く、症状の質(焦燥型か、心配型か、身体不安型か)を見極めた処方設計が重要になります。