—眠れないと気分が落ち込み、気分が落ち込むと眠れなくなる—
「最近眠れない」「気分が沈んで何もやる気が出ない」。この2つの症状は別々に見えて、実はとても深く結びついています。近年の研究では、不眠症とうつ病は一方向ではなく、“双方向”に影響し合う関係であることが分かってきました。
つまり、不眠がうつ病のきっかけになることもあれば、うつ病が不眠を引き起こすこともあるのです。
【不眠症の人は、うつ病になりやすい】
まず、多くの研究で示されているのが、「眠れない状態」が続くと将来的にうつ病になりやすいという事実です。
2016年の34研究・約17万人を対象としたメタアナリシスでは、不眠症状のある人は、ない人に比べてうつ病を発症するリスクが約2.27倍高いと報告されました。
睡眠不足が続くと、脳の感情調整機能が低下し、ストレスへの耐性も弱くなります。その結果、落ち込みや不安が強まり、うつ状態へ進みやすくなると考えられています。
【逆に、うつ病の人も不眠症になりやすい】
一方で、うつ病になると睡眠も大きく乱れます。うつ病では、以下のような睡眠症状がよくみられます。
- 寝つけない(入眠困難)
- 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く目が覚める(早朝覚醒)
- 十分寝ても熟睡感がない
レビュー論文では、うつ病患者のおよそ90%に何らかの睡眠障害の訴えがあるとされ、不眠はうつ病の代表的症状の一つです。
また、別の報告では、40〜75%のうつ病患者が臨床的な不眠症の基準を満たすとされています。
【なぜ、うつ病になると眠れなくなるのか】
うつ病では、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランス変化、体内時計(概日リズム)の乱れ、ストレスホルモンの上昇などが起こります。これにより、身体は疲れていても脳が休まらず、眠れなくなることがあります。
さらに、
「明日もだめかもしれない」
「また眠れなかったらどうしよう」
といった思考が強まることで、眠ろうとするほど緊張し、さらに眠れなくなる悪循環も起こります。
【不眠を放置すると、うつ病も長引きやすい】
うつ病に不眠が合併すると、症状が重くなりやすく、回復にも時間がかかることが知られています。臨床研究では、不眠があるうつ病患者は、抑うつ症状が重く、再発リスクも高いと報告されています。
そのため、うつ病治療では「気分の改善」だけでなく、「睡眠の改善」も同時に重要な治療目標になります。
【眠れない・気分が落ちるときは早めの相談を】
次のような状態が2週間以上続く場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
- 寝つけない日が続く
- 朝早く目覚めてしまう
- 気分が沈む
- やる気が出ない
- 食欲低下、疲労感がある
- 仕事や日常生活に支障が出ている
【まとめ】
不眠症とうつ病は、別々の問題ではありません。眠れないことでうつになりやすくなり、うつになるとさらに眠れなくなる。この双方向の悪循環が、症状を長引かせる原因になります。
だからこそ、「眠れないだけ」と軽く考えず、睡眠の乱れを早めに整えることが、こころの健康を守る第一歩です。