「自主性」と「主体性」に疲れてしまったあなたへ
――いまの教育と職場が私たちに求めているもの――
最近、「自主性を大切に」「主体的に考えよう」という言葉を、学校や職場で頻繁に耳にするようになりました。近年の教育現場では、正解を覚える学びから、自分で問いを立て、自分で選択する学びへと大きく舵が切られています。これは本来、とても前向きで、人間らしい成長を促す考え方です。
しかし、うつで苦しんでいる会社員の方にとって、この言葉は時に重く、苦しいものとして響くことがあります。
自主性と主体性は「似て非なるもの」
教育の現場では、「自主性」と「主体性」はしばしば同じ意味で使われがちですが、実は少し違います。
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自主性:決められた枠の中で、自分から進んで行動すること
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主体性:そもそも「自分はどうしたいのか」を考え、選ぶこと
主体性はとても大切ですが、エネルギーを必要とします。うつ状態では、意欲や判断力が低下し、「考える」「選ぶ」こと自体が大きな負担になります。その状態で「主体的に考えて」「自分で決めて」と求められると、できない自分を責めてしまい、症状が悪化することも少なくありません。
「やる気がない」のではなく「力が出ない」
職場で「もっと自主的に」「指示待ちにならないで」と言われ、苦しくなった経験はありませんか。うつのとき、それは甘えでも怠慢でもありません。脳のブレーキとアクセルのバランスが崩れ、エネルギーが出せなくなっている状態なのです。
教育や職場が理想とする「主体的な人材像」は、心身が健康なときにこそ発揮しやすいものです。調子を崩している時期には、「指示がある」「枠が決まっている」ほうが、安心して動けることも多いのです。
主体性は「回復のゴール」に近い
近年の教育現場では、「主体性は育てるもの」「段階的に支えることが重要」と考えられるようになってきました。これは、うつの回復過程ともよく似ています。
最初から「自分で考えて決める」必要はありません。
まずは、
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今日は会社に行けた
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指示された仕事を一つ終えられた
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休む判断ができた
それだけで十分です。主体性は、心の体力が戻ってきたとき、自然と芽生えてくるものです。
「今のあなたに合った主体性」でいい
うつの治療や回復において大切なのは、「理想の自分」を目指すことではなく、「今の自分に合った選択」をすることです。
誰かが決めた正解に従う時期があってもいい。頼ることも、休むことも、立派な主体的行動です。
もし「主体的でなければならない」という言葉に苦しさを感じているなら、それはあなたが弱いからではありません。今は、そうした言葉が合わない時期なだけです。
回復とともに、あなた自身のペースで、「自分で選べる感覚」は必ず戻ってきます。どうか焦らず、今の自分を責めずにいてください。